
以前「社会人になってからTOEICを受けて感じたこと – TOEICって結局仕事面で役に立つのか」という記事でも書きましたが、私は今なお英語に課題意識を持つ中で、日々英語を使って仕事をしています。入社してしばらく特に辛かったのがミーティング。
たとえTOEICで良い点数を取っても、実践の場では悲しいほど力及びません。話に全く付いていけないことが多く、悔しい思いをする日々。途中から話を見失い、地蔵のように黙り込んだり、ズレた回答をしてしまう自分を不甲斐なく思うばかり。
今回は、こんな「ミーティング置いてけぼり問題」に関する個人の体験と、改善に効いたコツについて書きました。
話を見失う理由を振り返る
私の上司は米Google出身の超優秀な方で、英中ネイティブな上に日本語も堪能なトライリンガル。いつも私が壁にぶち当たる度に、親身になって的確なアドバイスをくれます。私が「ミーティングで置いてけぼりになってしまうんです」と相談をした時、彼女はこう言ってくれました。
「それ、本当に英語だけが理由かなあ。分からないと思った時に、相手にちゃんと確認した?ナナさんはもっとアクティブに聞いた方が良いと思う。」
そんなの当然だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、英語面での課題にとらわれるあまり、「もっと英語を伸ばさなきゃ何も解決しない」と焦っていた私には目からウロコの思いでした。
実際、これまでの失敗を振り返ってみると、私がミーティングで「話を見失った」と思う時には、英語面以外にもいくつかの理由があることが分かったのです。
- 英語的な問題でついていけない
- 英語の単語やフレーズ自体を知らない
- 単語やフレーズ自体は知っているが、アクセントやスピードが原因で聞き取れていない
- 英語以外の問題でついていけない
- 話のトピック自体を十分に理解していない(大人数のミーティングなど)
- 知らない用語(社内用語など)
- 機材や回線の問題
- 実は話し手が、話を整理しないまま話している
私のように英語を後から学び始めた場合、何か分からないことがあると何かと自分の英語力のせいだと思いがち。ただ、日本人同士でも伝え方が上手な人と苦手な人がいるように、英語ネイティブだからといって分かりやすい話し方をしているとは限りません。
私に最も足りなかったのは、「分からない」と感じた時にそれを解決しようとする姿勢。日本語では当たり前にやっていることを、英語では完全に疎かにしていたこと。そして、シャイになりすぎていたことを痛感しました。
プロアクティブリスニングとは
「プロアクティブリスニング(アクティブリスニング)」という言葉は様々な意味で使われていますが、文字通り「アクティブに聞くこと」。
私は4年前、フィリピンで働き始めた頃に現地の友人からこの言葉を教えてもらいました。彼女いわく「聞くという行為を『一方向の受動的な動作』と考えずに『双方向のやり取り』として考えるんだよ」とのこと。
言われてみれば、聞くという言葉には、「相手の話を聞く(listen)」という受け身の意味と、「相手に分からないことを聞く(ask)」という能動的な意味がありますよね。
仕事におけるプロアクティブリスティングは、一生懸命「聞いて(listen)」、分からないことは「聞く(ask)」ことで、理解を深めていくことだというのが私の解釈です。
フィリピンにいた当時は「ふーん」と理解した気になっただけでしたが、今になってその大切さに気付かされています。
仕事の場では、例えば下記のようなケースがプロアクティブリスニングに当たると言えます。日本語であれば、多くの方がが無意識にやっていることではないでしょうか。
- 話を見失いそうになった時に、「待って」と中断して確認する
- 相手の話のポイントをまとめて理解にズレがないか確認する
- 分からなかった部分について質問をして明確にする
プロアクティブリスニングに使える英語フレーズ
以前私がビジネス英語の授業で教わった内容の中で、プロアクティブリスニングのために使いやすかった英語フレーズ例やTipsを下記ご紹介しておきます。
相手の話に割って入る必要がある時
- Sorry, ~~~
- Hold on a second,
- Could you repeat that?
- 文章の聞き取れなかった部分をWhat/When/Whereなど疑問詞に置きかえて聞く
- 例) A: I used xxx(聞き取れなかった). B: You used what?
- 中断しようとしてもなかなか中断してくれない人がいる時: 相手の名前を呼んでみる
- 相手が目上の人など、中断することに躊躇いがある時: 最初にSorryを付けてから話すと丁寧な印象
相手の話を理解できているかを確認する時
- Sorry, but let me check if I understand correctly.
- I’m not sure if I understand, but ~~
- Correct me if I’m wrong.
- Let me make sure I’ve got this right.
- You mean ~~
- It seems that you ~~
- Just to clarify, ~~
- So ~~~. Is that right?
何か特定のトピックについて触れたい時
- Regarding ~~
- For the ~~
- Going back to ~~,
- When you said ~~
- What do you mean by ~~?
- Can you tell me more~~?
言葉の面だけでなく、態度の面でも変化を出せます。聞く姿勢を前のめりにするだけでも、聞こうという自分の意識が高まり、相手からも「真剣に聞いてくれている」という印象が強くなります。
英語でプロアクティブリスニングを実践する時の壁
とはいえ、日本語でできることを英語でもいきなり実践できる訳ではありませんでした。私の場合、こんな躊躇いや難しさがありました。
- 自分の英語力や勉強不足が原因の場合、毎回議論を止めて確認するわけにいかない
- 大人数のミーティングでは、自分勝手に議論を止めるわけにいかない
- 誰かに迷惑をかけることや「分かっていない」と思われることを恐れ、シャイになってしまう
- 「何あいつ急に意識高くなってんの」と思われたら嫌だな、という自意識過剰な不安
特に最後の2つはザ・日本人な課題だと思います。なかなか踏み切り出せないでいる私に、上司は「理解が中途半端なままで進む方が取り返しがつかなくなるよ」と背中を押してくれました。確かに、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥。理解が至らないままズレた受け答えをする方が、よっぽど相手を困らせるのかもしれません。
TPOをわきまえつつ自分の姿勢を変えるため、私の場合は1on1などの小さなミーティングや、自分が意見を求められるミーティングから意識して始めるようにしました。
規模が大きめの報告系ミーティングの場合、割り込むことが不適切な場合には、ミーティングが終わった後に、分からなかったことを他の人に聞くことから徐々に始めました。(質疑応答のタイミングがある場合、その場で聞く方がベターだと思います。)
実践し始めて感じたことは、ほとんどの場合相手に何も迷惑をかけないということ。自分の理解力が原因だと感じる時でも「もし私の理解が間違っていたら申し訳ないんだけど……」と始めることで、相手に特に不快感を与えないことがよく分かりました。ノンネイティブの人が英語面でハンデがあること、「語学力=その人の能力」ではないことは、ネイティブの人もさすがに分かっています。
対等のプレゼンスを出すという面ではまだまだこれからですが、聞く姿勢を変えることで、自分の存在価値ゼロという絶望感は薄れてきました。分からないことがあれば確認をしてから話すので、英語力のハンデこそあれ、トンチンカンな意見を出すことが徐々に減ってきたように思います。
最後に:自分だけが置いてけぼりとは限らない
とある友人が、こんなアドバイスをしてくれました。
「英語・日本語問わず、ミーティングで自分だけが分かっていないとは限らないと思うよ。実は隣で熱心に頷いている人も、同じように何も分かっていないかもしれない。誰かが確認することで、心の中で『なるほど、そういうことか』って思っているかもね。」
これまた今まで抜けていた視点でした。「確認をすることで、他の人の理解も進む可能性がある」という発想は、迷惑かけたくない症候群の私のハードルをぐっと下げてくれました。マネージャーの方であれば、メンバーが話についてこれているのか、たまに理解を確認すると良いのかもしれません。
また、当初地蔵モードになっていた時と比べると、ミーティングの時間を有意義に過ごそうという意識が高まりました。集中して話を聞くようになり、話が理解できない時も「何が分からないのか」を真剣に考えるようになりました。
まだまだ課題は多いですが、「話が分からなくなってきたから、他の仕事やメールを目で追い始める」よりは格段に良い時間を過ごせているように思います。
英語力は毎日勉強を継続したとしても、成果が現れるまでに一定の時間がかかります。ただ、聞く姿勢を変えることは、英語力を問わず誰でもすぐにできるので、現在進行形で英語と格闘する私にこそ必要なものでした。
以上、日本語でも英語でも大切な「プロアクティブリスニング」についてのお話でした。英語に課題意識を持ちつつも、日々のお仕事で英語を使っている同志の方のご参考になれば幸いです。